≪日比谷 前学長へのお願いメールの内容≫

 

 2月17日にICU史再考プロジェクト、村田、根本の連名で以下のようなメールを日比谷 前学長あてに送信しました。

内容は以下の通りです。

 

件名:ICU史再考プロジェクトからのお願い

 

文面:国際基督教大学学長

 日比谷潤子先生 

 

 日頃のICU大学運営への先生のご貢献に対し、卒業生として深く御礼申し上げます。

 学長任期が終わるまであと1か月半という大変お忙しい時期に、このようなメールを送る失礼をお許しください。

 

 私ども(ICU24期・村田広平および根本敬)は、昨年11月のICU祭において、「ICU史再考」をテーマにしたイベントを2日間行いました。日比谷先生にも短い時間でしたがご来場賜り、そのことについてとても感謝しております。

 これまで2年以上、少しずつではありますが、私どもはICUで学生運動が活発化した1966-70年の時期に関する歴史に関する再考に取り組み、これまで元学生側と元教員側の双方から、貴重な資料の提供と証言をいただくことができました。

 

 しかし、長期の休校状態に陥った1969年、授業再開のために、10月に本館など教育エリア全体を取り囲む鉄柵が設置され前後に関しては、まだ十分な資料を得られていません。「当時、大学側がカメラマンを雇って状況を記録した」と語る元全共闘幹部の証言があり、それらは図書館に保存されているという指摘を受けました。一連の資料には、大学へ抗議活動をした学生達を写した数多くの写真や、学生側が破壊活動を行ったとされるシーベリーチャペルの被災状況も含まれるであろうICU構内のさまざまな様子、大学内での会議の内容を記録したもの、大学を去った教員が残していった私物に至るまで含まれるようです。図書館のある方に以前そうした学生運動激化の時期の資料保管について伺ったところ、「未整理で今後も公開の予定はない」との返事をいただきました。

 

 大学側と学生側、双方の主張を知り、その判断の根拠となる資料を集め、冷静に分析していくことは、いわゆるICU「紛争期」(1966-70)の歴史を再考するためには重要な作業です。かつて、2000年に武田清子先生(本学元教授・故人)がまとめられた公式のICU史『未来をきり拓く大学―国際基督教大学50年の理念と軌跡』は貴重な内容を記した本であり、私どももこの本から多くのことを学びましたが、この本に書かれなかったことも多いという証言を数多く聞きます。

 

 当時の「紛争」に関係して自ら命を絶った学生が何人かいたことをご存知でしょうか(1967年と1969年の除籍後、あるいは鉄冊内での授業登録に悩んだ末での自死です)。こういうこともあったためでしょうか、当時ICUに在籍した何期にもわたる卒業生の中には、大学だけでなく同窓会への連絡さえ拒絶する方が少なくありません。そうした方々のことを思うと、当時の歴史の再考は特に必要で、そのための資料収集と客観的な分析は喫緊の課題であると考えます。

 

 従いまして、ICU図書館に残されてあるにもかかわらず、未整理のままにある当時の資料全般(写真を含む)を整理分類し、公開する方向で検討することこそが、まずは大切なことだと私どもは考えます。そのために、それを推進する作業グループをつくっていただきたく存じます。これには第三者にも加わっていただき、複数の立場から検証を進めることが必要だと考えます。

 

 私どもが愛してやまないICUが、今までタブー視してきた「過去の一時期」の歴史について再検証に乗り出すことは、実に厄介な作業であろうと推察いたします。しかし、日比谷先生には学長の任期を終えられる前にぜひこの作業を開始する決定を下していただき、次期学長への引継事項に含めていただきたく存じます。1969年からすでに50年が過ぎました。今のタイミングを逃せば、当時をよく知る人たちが今後亡くなられていくこともあり、二度と検証ができなくなってしまうことになりかねません。日比谷先生のご決断に期待いたします。

 

 この要望に関して、勝手ながら同窓会総会・懇親会の前日である3月27日(金)までにご返事を頂くことはできませんでしょうか。伏してお願い申し上げます。

 

 また、ご回答文は私どものプロジェクトのウェブサイトに掲載させていただきたく存じます。

 

 長文のメールをお読みくださり、誠にありがとうございました。重ねて日比谷先生のこれまでのICUでのご貢献に対し、厚くお礼申し上げます。

 

 2020年2月17日

 

 ICU史再考プロジェクト

  村田広平、根本敬 (共に1976年入学・1D80・24期)

 

 ≪上記お願いメール送信後の結果と今後について≫

 

メール送信日の2月17日以降、ご返事の期限としてお願いした3月27日や、任期最終日3月31日までご返事は頂けませんでした。

 

私たちは、例えばここのところ財務省や内閣府で記録が改ざんされたり、合理性を欠く短期間で破棄されたりしたというニュースに度々触れてきました。

ICU図書館は、当時の原資料を、未整理にしろ、そのまま保管して取って置いただけでも、まだそれらの官庁に比べれば望ましい対応だったと思います。

ただ、今後それらを公開の予定もない、としていることは、見過ごすことはできません。

資料が整理も検証もされないまま保管されるということは、歴史を明らかにしていこうという態度とは程遠いものです。

 

それらの資料の中には、極めて個人的な情報や、非公開の会議の内容なども含むことは想像できます。

全てすぐ公開することを私たちは求めているわけではありません。

ICU職員である図書館職員の他、大学理事会の人間、現同窓会関係者、当時の大学当局にいた人間、対立する立場にあったそれぞれの教員、いくつかの異なる立場の学生、このICUの大学紛争問題を取り上げた今までの学生(現OB)や、この問題に関心を寄せる私たちのような人間、こうした問題に詳しくICUの関係者ではない研究者、など様々な人々からなる、「紛争期」のICU史検証のための作業グループの設置を、大学に対し、要望いたします。

 

岩切 新学長にはあらためて、大学として上記の第三者を交えた作業グループを設置し、ICU図書館所蔵の「紛争期」資料の調査と事実の検証を行っていくお願いを、郵送(学長親展)でお送りする予定です。結果についてもまた本サイトで掲載します。

 

 ICU史再考プロジェクト 村田広平、根本敬 (2020年4月2日)